<<第5章 シャバの空気>>
地元の鹿児島に帰り、 あの地獄からようやく開放されたのだ。
酒も飲めるし、 タバコも吸える、スマホ・パソコンもいじれるし、
好きな場所に行き、 好きなものを買い、 好きなもの を食べ、好きなことをする。
入院するまでは普通のことだと感じていたことが、今はとても幸せなことだと感じた。
鹿児島に帰ってきたある日、父が突然倒れた。
親戚のおじさんが勤務している病院に搬送されたと 母が連絡を受け、 急いで病院に向かう。
おじさんにCT画像を見せてもらいながら説明を受ける。
「大動脈乖離だね。 心臓近くの大動脈って3層構造なんだけど、層の間に血が入り込んで、血管の層が剥がれているね」
と言われた。
俺は 「深刻じゃないか」 と思い、 父は鹿児島医療センターに搬送されることになった。
救急車の後を母と一緒に車で追いかけ、 鹿児島医療センターに向かう。
父はICUに入れられ、 母と俺はICUに入室時のルールなどを看護師に説明を受ける。
早速入室し、父に会う。
父は意識があり、声は弱々しいが会話ができた。 「これくらい心配ないよ。 早く仕事に戻らないと」 母は
「誰かがやってくれるからいいのよ!!」
と言っていた。 俺はこの時の会話を覚えていない。 覚えているのは、母と俺は父の前で泣かないように 一生懸命こらえていたことくらいだ。
それくらいショックだった。
ICUの待合室で待っていると、父の父(俺の父方のじいちゃん)が来た。
その日から24時間、母とじいちゃんで交代で待つことになった。
俺は実家に戻ったり、 病院の近くに母の実家があったので、そこで一人で過ごしたりした。
夜になってやることないし、 金もないから、 近くのコンビニで大して酒も飲めないのにチューハイを一缶買い帰り道の焼き鳥屋で豚バラとカワを2本だけ買った。
それを食らい、チューハイを飲みながら、 人生って理不尽だと悟った。
そして手術当日。
手術は無事成功したが、意識が戻らない。
俺は父の手を握り、一生懸命願った。